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TAMA音楽フォーラム

若手演奏家育成とクラシック音楽の振興を目指します

活動履歴2019

セミナーの内容

2019.1.19.(土)15時開演

公開レッスン&コンサート
講 師:堀米ゆず子(ヴァイオリン)
共 演:津田裕也(ピアノ)


 

 
《受講生》
  a) 城戸かれん(ヴァイオリン) 東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程2年在学中  
     横山瑠佳(ピアノ)      東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程1年在学中  
b) 糸原彩香(ヴァイオリン)  愛知県立芸術大学卒業  
    佐伯麻友(ピアノ)     桐朋学園大学音楽学部研究科修了  
c) 齋藤 碧(ヴァイオリン)    東京藝術大学3年在学中  
    尾城杏奈(ピアノ)     東京藝術大学3年在学中


《コンサートプログラム》

R.シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調


 

2019.2.18.(月)17時開演

コンサート
演 奏:クァルテット ベルリン・トウキョウ


 

《コンサートプログラム》


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調『ハープ」 Op.74
シューベルト:弦楽四重奏曲 第15番 ト長調 Op.161 D887

当初2月9日に予定されていましたが、大雪のため中止とし、2月18日に延期し実施しました。


 


2019.3.17.(日)15時開演

レクチャー&コンサート
講 師:伊藤 恵(ピアノ)
共 演:戸原直、高橋奈緒(ヴァイオリン)樹神有紀(ヴィオラ)、佐古健一(チェロ)


 

《コンサートプログラム》


モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K478
モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番 イ長調 K414

 
 


2019.4.14.(日)15時開演

公開レッスン&コンサート
講 師:植田克己(ピアノ)
共 演:玉井菜採(ヴァイオリン)


 

《受講生》

上敷領 藍子(ヴァイオリン)   東京藝術大学音楽高校、同大学を経て、同大学大学院修士課程を修了。  オランダ・マーストリヒト音楽院卒業。  現在昭和音楽大学大学院音楽研究科博士後期課程に在籍。   吉武 優(ピアノ)  東京藝術大学を経て、同大学大学院音楽研究科修了。  ベルリン芸術大学ディプロム課程卒業、国家演奏家資格を取得し、国家演奏家資格課程修了。  桐朋学園大学および東京藝術大学ピアノ科非常勤講師、同大学弦楽科伴奏助手。


《コンサートプログラム》

モーツァルト:「泉のほとりで」による6つの変奏曲 ト短調 K360(374)
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第10番 ト長調 作品96


 
 


2019.6.3.(月)16時開演 ※平日夕方からのセミナーです。

公開レッスン&コンサート
講 師:エリザベート・ウェーバー(ヴァイオリン)
通 訳:薮田京子


 

《受講生》

向山 亜木子  東京藝術大学音楽学部3年在学中  
受講曲 モーツァルト:協奏曲 第3番  
 
岩崎 弓乃    東京藝術大学音楽学部4年在学中  
受講曲 モーツァルト:協奏曲 第5番

《コンサートプログラム》


J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ ト短調 BWV1001
モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 K301(293a)
F.クライスラー:レシタティーヴォとスケルツォ ー キャプリス

 
 


2019.6.30.(日)15時開演

コンサート
演 奏:アーニマ四重奏団
山崎貴子、松原勝也(ヴァイオリン)、吉田 篤(ヴィオラ)、くぼた りょう(チェロ)
 

《コンサートプログラム》

 ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.33-6  
モーツァルト:弦楽四重奏曲 ニ短調 KV421          
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 イ長調 Op.18-5
 
 
 


セミナーレポート

公開レッスン&コンサート
講師:堀米ゆず子(ヴァイオリン)
2019年1月19日(土)15時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 2019年のTAMA音楽フォーラムは堀米ゆず子さんによるレッスン・コンサートで幕を開けた。まず岡山芳子理事長が新年のあいさつをした後、堀米さんは1年前のフランクのヴァイオリン・ソナタの素晴らしい講座につづくもので、今日は3組の受講グループ6人に来ていただいた、と語った。レッスン曲は近年とみに評価の高まるR.シュトラウスのピアノとヴァイオリンのためのソナタ変ホ長調作品18。
堀米さんは1980年、ベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクールで日本人初の優勝を飾り一躍名を上げた世界的名ヴァイオリニスト。現在、欧米と日本で演奏活動する傍ら、イギリス、ベルギーで教鞭をとっている。
この日のレッスンは、受講aグループの城戸かれんさん(V=東京藝大大学院修士課程2年)と横山瑠佳さん(P=東京藝大大学院修士1年)が第1楽章を、bグループの糸原彩香さん(V=愛知県立芸大卒)と佐伯麻友さん(P=桐朋学園大研究科修了)が第2楽章を、cグループの斎藤碧さん(V=東京藝大3年)と尾城杏奈さん(P=東京藝大3年)が第3楽章を演奏し、それぞれ指導を受けた。堀米さんは自分のヴァイオリンを手にとりながら、実に綿密かつ懇切な指導ぶりで、その全容はとてもここに再現出来ず、わずかに気が付いた点だけを摘記する。
 
(第1楽章)
*演奏後、ヴァイオリンの城戸さんに「何が難しかったですか」と問いかけ、前へ前へと音色の変化豊かに進むところという話となり、堀米さんはベートーヴェンとの違いを例えに出した。師の江藤俊哉先生はベートーヴェンの密度はとても高いが、シュトラウスの場合はベートーヴェンに比べて空気が大切なので、音楽に空気を入れたほうがいいと言われていた。冒頭は手さぐりするように入っていくこと、アクセントなどの指示がやたらと出てくるので、アクセントをつけ過ぎないこと.指示に従いすぎるとテンポが遅くなる。
*情熱を籠めたいときは、体を右や左に動かすなど試みて強く弾く。
*この楽章にはシュトラウスならではの、曲をとんでもないところに連れて行く転調の妙がある。「エレクトラ」「バラの騎士」など彼のオペラはきれいなハーモニーに満ちている。そのような表現がほしい。
*曲想のまだ途上にあるフォルテを強く弾きすぎると後が続かない。
*コーダでは(シュトラウス的に)いやらしくならないで格好よく弾きたい。
 
(第2楽章)
*この楽章の演奏は大変、とても難しい。冒頭のヴァイオリンはダウンでなくアップボウで弾くといい。いろいろ試すのは大切だ。
*たとえばアルゲリッチのピアノ演奏は、シューマンのソナタなど聞いても非常に力強い。しかしそれだけではない。押すだけでなく引くことをわたしは彼女から学んだ。
*スラーの表記にはできる限り従った方がいい。しかし変えたいときはなるべくさりげなく自然に。
*一つのエピソードが終わり、次へ移るとき、変化をつけたい。動きを見せてほしい。もっと空気の入ったふくらみを・・・。
*音楽は会話なのだ。フレーズ全部にスラーがかかっているときは、どこで切るかを決めたい。会話だから役割を分担したい。
*いろいろの曲折のあとのへ短調なのだから、そこはしっかりと表現したい。
*終わりのところは高く飛翔するように(と堀米さんはジェスチャーで示した)。
 
(第3楽章)
*とてもよく弾けた、と語りつついくつかの注意があった。リズムをよく考えたい。もっとコントラストがほしいところ、メリハリをつけたいところがある。
*出だしのピアノは音のぶつかり合いをもっと出していい。葬送行進曲的な雰囲気だから、音のメリハリでそれがわかるように弾きたい。
*その後のト長調のメロディー、そこは解放された感じで、なめらかに、しゃくり上げないで。
*(終結部で)フォルテを強くしすぎないで。4つのテーマが全部聞こえるように演奏したい。似たフレーズの繰り返しでは単調にならず、変化をつけて。このあたり堀米さんは手拍子でリズムを取りながらの指導となった。
 
 15分の休憩後、コンサートに移り、ピアニストの津田裕也さん(東京藝大卒業後、ベルリン芸大で研鑽を積み、いま国際的評価を高めている)が堀米さんと共演して、先ほどのR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏した。そこには、まだ20代前半の若きR.シュトラウスの情熱(第1楽章)、綿々たる抒情(第2楽章)、「ドン・ファン」や「バラの騎士」を思わせる起伏にとんだ表情(第3楽章)が見事に再現された。
 満席の聴衆の長く鳴りやまない拍手にこたえて、マリア・テレジア・フォン・パラディスの「シシリエンヌ」が初春の夕べを静かに彩った。(記録:西谷晋)
 

コンサート
演奏: クァルテット ベルリン-トウキョウ
2019年2月18日(月)17時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 TAMA音楽フォーラムとしては異例の月曜日午後5時からの演奏会となった。冒頭、岡山芳子理事長は、もともと、この演奏会は2月9日午後3時からの予定だったが、その日は大雪が予想されたため、急遽中止となり、4人のメンバーは多忙な日程の中、この日だけ開いているとのことで、実現した、聴衆の皆様にもご迷惑をかけた­­―-とあいさつした。クァルッテット ベルリン‐トウキョウの来演はこの日が2回目で、2016年1月30日のニューイヤーコンサート以来となる。当時お元気だった岡山潔前理事長が「いま最も期待している四重奏団」と紹介し、コンサートの後、演奏を絶賛しつつ、またぜひ来てもらいたいと語っていた。それがこの日実現したわけである。
 演奏前に第1ヴァイオリンの守屋剛志さんが、「プログラムにはありませんが」と断りながら、J.S.バッハの「マタイ受難曲」からのコラール「いつの日か私が去り逝かねばならぬとき」を弦楽四重奏で演奏した。言葉にはしなかったが、それは、芸大学生時代から薫陶を受けた師、昨年10月1日に他界した岡山潔へのオマージュであり追悼でもあった。
 これに続いてコンサートは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」と、休憩をはさんでシューベルトの弦楽四重奏曲第15番ト長調D887の2曲が演奏された。いずれも若々しい情熱と、緩徐楽章の心を込めた深い抒情など、曲想を見事に表現し、聴衆から強い称賛の拍手を浴びた。その演奏には団員4人の敬愛する岡山潔前理事長への想いがこもっていた。長い拍手にこたえて、アンコールとして、前回の来演でも取り上げたハンガリーの長老作曲家、ジョルジュ・クルタークの「弦楽四重奏のための12のミクロリュード」から第1曲と第5曲を演奏した。バッハを敬愛するクルタークの悲しみと安らぎが交差するこのアンコールにさらに大きな拍手が送られた。
 最後に岡山芳子理事長が演奏をたたえつつ、「岡山潔が10年前にウィーン音楽・芸術大学の客員教授として、1年近く滞在した時、クルタークの音楽に接して感動し、ぜひ日本に呼びたいと言い続けていたのですが」と語った。
 現在のメンバーは守屋剛志(第1ヴァイオリン)、ディミトリ・パヴロフ(第2ヴァイオリン)、グレゴール・フラーバー(ヴィオラ)、松本瑠衣子(チェロ)の4人。岡山潔の強い推挽により札幌・六花亭ふきのとうホールのレジデンス・クァルテットに選ばれ、今年から契約はさらに3年延長された。この間、ヴィオラの交代はあったが、同四重奏団は国際的評価をさらに高めながら、世界第一級の弦楽四重奏団への道を着実に歩んでいるといえよう。
(記録:西谷晋)
 

レクチャー&コンサート
講 師  伊藤 恵(ピアノ)
共 演  戸原 直、高橋 奈緒(ヴァイオリン)
     樹神 有紀(ヴィオラ)
     佐古 健一(チェロ)
2019年3月17日(日)15時 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 第96TAMA音楽フォーラム室内楽セミナーの講師を務めたのはピアニストの伊藤恵・東京藝術大学教授。桐朋学園大学特任教授も兼ねている。岡山(服部)芳子・理事長がまず、ソロだけでなく室内楽や協奏曲でも活躍している伊藤先生を紹介、次いで共演の4人の方々は日ごろグループで活動しているのではなく、今日のコンサートのために集まったなどと説明した。
 
伊藤先生は「今日はサクラの花がもうすぐ開花する日曜日です。スマホに替えて二か月、それまではガラケーで・・・」などと近況を交えて挨拶。「このセミナーには仰々しいタイトルがついていますが、以前に(モーツァルトの生まれ故郷)ザルツブルクのモーツァルテウムで勉強したので、その経験からお話します。高卒(桐朋学園高校)でザルツブルクへ行き、1年くらいで慣れて。学生券はとても安く、貴重な演奏会を聴く機会に恵まれました」と振り返った。
 
1954年のザルツブルク音楽祭で巨匠フルトヴェングラーが指揮したモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 175691年)のオペラ「ドン・ジョヴァンニ(正式には『罰せられた放蕩者またはドン・ジョヴァンニ』)K527」の伝説的な名演がカラー映画(現在はDVD)になって残っているが、1819歳当時の先生はこの映画にも触発されて、「(モーツァルトという)偉い人がつくった音楽だなぁ、ものすごく偉い人、神様だと思っていました」。このなかで歌われるイタリア語の美しいアリア、「赦せない」とか、純愛、裏切りなどの激烈な歌詞は日本語の語感とはずいぶん違うと思ったという(台本はロレンツォ・ダ・ポンテ)。今年にはいって金沢、東京、熊本で行われた日本語による「ドン・ジョヴァンニ」の公演に加わったチェロの佐古さんも「日本語のテクストなので語感としては(原曲本来のイタリア語とは)全然違って・・・」と自身の印象を語った。モーツアルトは台本の尖った言葉、美しくも切ない表現をそれらにふさわしい音楽につくり上げ、一見すると不道徳な喜劇だが、悲劇の要素も備わった複雑な曲に仕上げたわけだ(日本語で歌うと、どこか違和感があるのだろう)。
 
 先生は「モーツァルトは我々が想像もつかない洞察力を音楽で表してしまいます。14歳の時につくったオペラ『ポントの王ミトリダーテ』(K87)は美しいだけでなく、嘆き、苦しみ、深い悲しみが切々と迫ってくる。その天才性はあがめるしかない。モーツァルトの音楽の究極のジャンルはオペラであり、いろいろなキャラクターが出てきて激しくてドラマチック、美しい女声のアリアが出てきて聴いている我々自身が触発されてしまう」と続けた。
 
 この日のセミナー&コンサートで取り上げたピアノ四重奏曲第1K478は交響曲第25K183、同第40K550や弦楽五重奏曲第4K516と同じト短調。悲しみとか死を予感させる調性ともいわれる。先生が先に触れた「ドン・ジョヴァンニ」の序曲は、主人公に決闘で殺された騎士長が石像となって現れ、押し問答の末にジョヴァンニが地獄に落ちる第2幕後半、オペラのヤマ場の音楽で始まる。この部分は恨みや怒り、修羅場を表すニ短調で、これもピアノ四重奏曲ト短調の出だしも、ともに重厚で悲劇的な感じを与える。
 
 このト短調四重奏曲を楽譜として出版する際にモーツァルトは出版社側から、難しくて誰も弾けないと言われたという。とりわけ、そのころのチェロ奏者の力量は楽譜の水準に達していなかったのだとか。当時のウィーンでは楽譜をたくさん売るために、曲そのものをもっとやさしくしなければならなかったわけである。先生は「(難しい曲にした)モーツァルトにとって、地獄みたいなものの存在が大切だったのでは。天国的なもの、地獄的なものの共存が私たちの胸を打つのです」と付け加えた。
 
 一方のピアノ協奏曲第12番イ長調K414は予約演奏会のために作曲した第11番から13番の3曲のなかのひとつで、なぜモーツアルト自身がオーケストラ部分を弦楽四重奏に編曲したのか。その訳は小人数で弾けるから、ということらしい。ピアノ四重奏曲(ピアノにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各1)に対し、こちらは第2ヴァイオリンが付け加わるだけの編成なので、室内楽として演奏する機会がぐっと増える(たぶん楽譜も多く売れる?)。
 
 ピアノ協奏曲第12番の第1楽章は実に軽やか心地よく、第2楽章はピアノも四重奏ものびのびとうたうなど、いかにも明るいモーツアルトらしい。先生は「指揮者がいないのは、それはそれでよいのですね。室内楽のように自発的に弾く醍醐味があります。(予約演奏会では)モーツァルトはたぶん、(オーケストラの指揮とピアノを兼ねた)弾き振りぶりだったのでしょう」と、演奏家心理、本音に言及した。
 
今日のために組成されたとはとても思えないすばらしい演奏がスタジオ・コンチェルティーノに響きわたり、モーツァルトという作曲家の幅の広さと深み、オーケストラとはまた違う室内楽のよさを味わうことができた。
 
最後に岡山(服部)理事長が「生き生きとファンタジーが湧いてきて、どう言ったらいいのか、弾いている人と聴いている人の垣根がないと言うか、不思議な幸福感に包まれました」と締めくくった。(走尾 正敬)
 
 

公開レッスン&コンサート
 
講師:エリザベート・ヴェーバー(ヴァイオリン)
通訳/ピアノ 薮田京子
    
2019年6月3日(月)16時 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 今日はヴァイオリニストのエリザベート・ヴェーバーさんのフォーラム初登場である。ヴェーバーさんは旧東ドイツのチューリンゲン生まれ。ワイマールで学び、その後ベルリン、ロンドンで研鑽を積み、ヨーゼフ・シゲッティ・コンクール、シュポア・コンクール、マックス・ロスタル・コンクールなど相次ぎ優勝し、国際的なヴァイオリニストの地位を築いてきた。ローザンヌ室内管、チューリヒ室内管、マーラー室内管のコンサートマスターを務め、室内楽奏者としてもアイスラーSQ,オルフェリアンSQのメンバーとして活躍し、ハーディングなど著名指揮者との共演も多い。2006年からドイツ・リューベック音楽大学の教授として後進の指導にもあたっている。今回、神戸室内合奏団に招かれて訪日し、同室内管とJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲第1番の名演を披露した後、TAMAフォーラムに駆け付けた。
 公開レッスンの受講者は東京藝大3年の向山亜木子さん(V)と原沙綾さん(P伴奏)と東京藝大4年の岩崎弓乃さん(V)と千葉遙一郎さん(P伴奏)がそれぞれモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の第3番の第1楽章と同第4番の第1楽章を通して演奏した後、ヴェーバーさんが自分の愛器を手にしながら主にヴァイオリニスト受講生に対して懇切なレッスンを行った。その指導は熱烈かつ綿密で、どちらも予定の時間をオーバーするほどとなった。このレスンの概要を以下の通り記録しておく。
 〈向山・原コンビ〉
*きっちりひかれてはいるが、これまで、モーツアルトの作品はほかにどんなものを弾いてきたか。彼の映画や肖像画を見たことがあるか。どんな人物だったのか。楽譜には細かい指示が書いていないので、どこから音楽のイメージをつくるのかが大切だ。演奏するときは(楽譜をなぞるだけでなく)彼のいろいろな面を表現してほしい。
*(ダウンボウをやらせて)柔らかく自然に弓を引き下ろすこと。手首に力を入れないで。肩を柔らかく動かして.体が固いのはよくない。音をホールに響かせよう。音楽をどんどん進行させよう。余計な力を入れないで。
*あなたは声を出して歌うことがありますか。歌うことはとても大切ですよ。
 〈岩崎・千葉コンビ〉
*とてもいいです。ご自分のメッセージが聞こえてきました。ただ、もう少しいろいろな意味で演奏に自由さがあればいいのですが。アーティキュレーションをもっといろいろ使い分ければいい。もっと自在に演奏して自分でも楽しめるような演奏を心掛けてほしい。
*モーツアルトらしさを表現することが大切です。
*(ヴァイオリンの出だしをビブラ―トなしで演奏させて)ビブラートなしのほうが音程の正確さを求められる。ビブラ―トに頼りすぎないように。
*もっと自由に。こうでなければ、という思いにとらわれないで弾き始めたい。小さなカデンツァはゆっくり弾き始めること。弓を押し付けるのではなく、オープンにして音を響かせよう。下降音型で音がぐったり落ちないように、しっかり保持すること。構え過ぎないで。もっと喜びの表情で。
*自然でいながら、自在な弓使いで、しかし集中すべきところは集中して・・・。
 
 以上でレッスンは時間切れとなり、休憩後、コンサートに移った。
曲目はまず、バッハの無伴奏ソナタ第1番ト短調BWV1001。つづいて、ヴィットマンの無伴奏練習曲第1番が予定されていたが、モーツアルトのレッスンの後でもあり、曲目を変更し、モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調KV301の第1楽章が、レッスンの通訳を巧みに果たした薮田京子さんのピアノで共演された。最後にクライスラーのヴァイオリンソロ曲「レシタティーボとスケルツオ・キャプリス」作品6で締めくくった。演奏は、レッスン時に想像した通り、柔らかく豊かな音色で、3曲それぞれの曲想を悠然と描き分け、いつまでも拍手が鳴りやまなかった。(記録:西谷晋)