TAMA音楽フォーラム

若手演奏家育成とクラシック音楽の振興を目指します

活動履歴2018

セミナーの内容

2018.1.14.(日)15時開演

レクチャー&コンサート
講 師:高野耀子(ピアノ)  
 

 
《コンサートプログラム》

J.S. Bach :半音階的幻想曲とフーガ BWV 903 
W.A. Mozart :ソナタ 第10番 ハ長調 K 330
L. v. Beethoven :ロンド ハ長調 op.51-1
F.Chopin :バラード第1番 ト短調 op.23 
              ノクターン第4番 ヘ長調 OP.15の1
    ノクターン第7番 嬰ハ短調 Op.27の1
    ノクターン第16番 変ホ長調 Op.55の2

F.Mendelssohn :厳格なる変奏曲 ニ短調 OP.54
 
 
 


 

2018.2.17.(土)15〜18時

公開レッスン&コンサート
講 師 :佐久間由美子(フルート)
共 演 :岡本知也(ピアノ)

 
《コンサートプログラム》
J.S.バッハ:フルートのための無伴奏パルティータイ短調 BWV1013 (1722/23年)
C.Ph.バッハ:フルートソナタ(無伴奏) Wq.132/H562(1747年)
C.Ph.バッハ:フルートソナタト長調 Wq.133/H564 " Hamburger Sonate" (1786年)

《受講生》
・森山 豊(みのり)   国立音楽大学卒業、同大学管弦楽コース修了。  
・占部 智美(さとみ)   慶応義塾大学文学部独文学専攻ならびに桐朋学園芸術短期大学芸術科音楽専攻卒業。   同短期大学専攻科を経て、現在桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程に在籍。

 
 
 


2018.3.24.(土)15〜18時

レクチャー&コンサート
講 師 : 河野文昭(チェロ)
共 演 :河野美砂子(ピアノ)

 
《コンサートプログラム》
ベートーヴェン:チェロソナタ 第4番 ハ長調
ベートーヴェン:モーツァルトの「魔笛」の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調

 
 


セミナーレポート

2018年3月24日(土)15時 スタジオ・コンチェルティーノ
 

 
レクチャー&コンサート
講師:河野文昭(チェロ)
   河野美砂子(ピアノ)
 
 
今日はピアノとチェロのデュオのセミナーである。まず、岡山潔TAMA音楽フォーラム理事長からお二人の紹介があった。河野文昭氏は岡山潔弦楽四重奏団のチェリストであり、ともにベートーヴェンのすごさに共感してきた。美砂子夫人もベートーヴェンについて興味深い観点をお持ちなのが印象的であった。そんなことでお二人をお招きした。
 文昭氏は、今日のレクチャーについて、NHKの朝のドラマの夫にしゃべらせない夫婦漫才を連想させて会場の笑いを誘った後、最初にベートーヴェンのピアノとチェロのためのソナタ第4番作品102-1の話の後、全曲を演奏し、そのあと、ベートーヴェンの「魔笛の主題による7つの変奏曲」の解説と実演を行うと述べた。
 第4番は主に美砂子氏が解説を担当し、文昭氏が合の手を入れ、演奏による実例が示されるなごやかで興味深いレクチャーとなった。その要点を以下に摘記する。
*チェロの世界でバッハが旧約聖書、ベートーヴェンが新約聖書といわれるが、バッハに身体的面白さもあり、ベートーヴェンも精神的なだけでなく、新しいアイデアでの実験やいろいろな挑戦を最後までやった人ととらえたい。この4番のソナタも同様である。
*チェロ・ソナタ5曲全体が大きな一つの作品とみることもできる。ベートーヴェンもそれを意図していたかもしれない。1番から5番の調性はファソラドレであり、すこし意図的である。楽章数も1番が2、2番が23番が34番が25番が2とシンメトリーをなしていて、3番の第2楽章がいわばこの山脈の頂点をなしている。そのスケルツオの執拗さは意識的なのかもしれない。
*ソナタ第4番に焦点を合わせると、楽章は二つだけ、ベートーヴェン以前のソナタでは楽章が34が基本だった。彼のソナタはとにかく面白い。第3番の親しみやすい冒頭部に比べると4番はマニアックといえるが、第1楽章のアレグロ部には、3番の冒頭旋律が短調になって使われている。よく調べると、4番の第1楽章の冒頭のアンダンテ部の下降音型は第1番とも第2番とも関係している。これがベートーヴェン的なのだといえる。
*ベートーヴェンはこのように、以前の自分の作品をすごく意識して新しい作品を書いたといえる。彼の32曲のピアノ・ソナタにもそれがうかがえる。作品102の2つのチェロ・ソナタの場合も、その前の3曲とつながろうとした。しかし、関連はしていても内容は全く新しい。彼のソナタには必ず新しさと実験があった。前のものを壊して次のところへ行こうとしていた。ソナタに形式があり、短歌にも57577の定型がある。歌人としての私(美砂子氏)も定型からはみ出そうとする。ベートーヴェンにも型から出ようとする趣を感じる。
*和音について話をすると、ベートーヴェンは減七和音を好んだ。何か不吉で不安なことを連想させる和音である。これを半音下げた属七和音となると雰囲気が一変してその緊張が間もなく解決に向かうことを予測させる。この4番のソナタの第1楽章でもこれが使われている。減七をどれだけ意識するか、それとも属七和音の演奏の仕方で柔らかさをより重視するかは演奏者の解釈次第となる。
*第2楽章のアダージオはピアノとチェロの対話のなかで和音をつくっていく。そして対立から和解への様相を描き出す。アレグロに入るところで第1楽章のアレグロ部の音型が戻ってくる。
 以上でソナタ第4番の説明が終わり、ソナタの全曲が演奏された。話題が豊富で、説得力あるレクチャーの後だけに、先入観ではなく、曲の素晴らしさを実感させる演奏となった。
 休憩の後、「魔笛変奏曲」のレクチャーが主に文昭氏によって行われた。その要旨は以下の通り。そしてこの曲の実演で、じつに内容豊かなレクチャーコンサートの幕を閉じた。
*ベートーヴェンは変奏曲が上手であり、好きであった。いろいろな曲にそれが表れているし、ソナタ形式のなかにも取り入れた。第9交響曲でも第3楽章、第4楽章で変奏を行っている。
*この「魔笛変奏曲」はオペラ「魔笛」のなかのパパゲーノとパミーナのアリアをもとに7つの変奏をしたもの。当時ウィーンでは「魔笛」がはやっていて、ベートーヴェンもモーツアルトのオペラでは「魔笛」を好んでした。
*彼らしい仕掛けがこの変奏曲にもあり、主題が対話しながら進行して、第1変奏に入っていく。第4変奏は変ホ短調となり、様子がかわる。ここには、パミーナの悲しいト短調アリアをピアノ伴奏部に織り込んでいる。第5変奏で少しテンポを速めて、第6変奏のアダージオとなる。そして第7変奏で初めてアレグロとなる。コーダもついている。変奏の中で雰囲気がどのように変化していくかを楽しんでほしい。
*もう一つこの変奏曲で面白いのは第3変奏の旋律で、これはそのころ作曲中だった第2交響曲第2楽章の第2主題と同じもの。
*なぜこの曲に作品番号がないのか、番号なしの46番なのか。彼はこれとは別に「魔笛の主題による12の変奏曲」作品66を書いている。これには作品番号がついているが、出版社が勝手につけたもので、内容は作品番号がない7つの変奏曲の方が優れている。作品番号がないのは、チェロという楽器が独奏楽器としてまだ十分に認知されていなかったからだとも考えられる。ピアノとチェロが完全に対等になったのは、第3番作品69からである。なぜチェロは2重奏で扱いにくいのか。それは当時、チェロの高音を弾くのが難しかったからだろう。
*この変奏曲は、ピアノとチェロの対話に妙味があり、よくできた作品だといえる。
*ベートーヴェンの音楽の特徴として、単純な動機(素材)をもとにして音楽を展開していくところにある。このような音楽だからこそ、すたれることなくいまも生き残って人気を保っているといえる。(記録:西谷晋)