TAMA音楽フォーラム

若手演奏家育成とクラシック音楽の振興を目指します

活動履歴2016

セミナーの内容

「ニューイヤーコンサート~Quartet Berlin-Tokyoを迎えて~」

 
   セミナー形態:  レクチャー & コンサート
 
 
   演奏:   Quartet Berlin-Tokyo
 
ハイドン : 弦楽四重奏曲 ハ長調 Op.76-3 Hob.77 3 「皇帝」
クルターク :  “12 Microludes op.13 Hommage à Mihàly Andràs for String Quartet
シューマン :  弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41
 
 

「 マックス・レーガーの無伴奏チェロ組曲 」

 
   セミナー形態:  公開レッスン & コンサート
 
 
講師:クラウス・カンギーサー(チェロ) 
共演:服部 芳子(ヴァイオリン) 
 
 

  1. レーガー : 無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調
  2. オネゲル:ヴァイオリンとチェロのためのソナティネ

 
受講曲: M.レーガーの無伴奏チェロ組曲op.131c の第1、第2、第3番の中から一曲を選択
 
 
 
 
公開レッスン受講 応募締切: 2月6日(土)
 
受講曲目:レーガー 無伴奏チェロ組曲第1番
 
 
受講生:加藤菜生(チェロ)
 
2004年より佐渡裕率いるスーパーキッズ・オーケストラに所属。2006年 KOBE国際学生音楽コンクール弦楽器部門優秀賞。2007年 泉の森ジュニアチェロコンクール中学校部門銅賞。びわ湖シンフォニーホールにて京都市交響楽団と共演。2009年 アスペン ミュージック スクール(アメリカ・コロラド州)に参加。マイケル・マーメーガン氏に師事。20092013年 京都フランス音楽アカデミーに参加。2010年 泉の森ジュニアチェロコンクール高校生部門奨励賞。音楽への道CEM企画による「キオスクコンサート」に出演。姫路・パルナソスホール「フレッシュコンサート2010」に出演。日本クラシック音楽コンクール弦楽器部門全国大会第2位。2012年 横浜国際音楽コンクール入選。2013年 第4回コンコルソ ムジカアルテ金賞。フランスへ留学。2014年 パリ地方音楽院にてDEM(ディプロム)取得。2015年 コンセールヴィヴァン新人オーディション 優秀賞。これまでに故杉山實、森田健二、フィリップ・ミュレール、雨田一孝、ドナルド・リッチャー、ドミニク・ド・ウィリアンクール、河野文昭の各氏に師事。現在、東京藝術大学音楽学部4年在学中。
 

 「海外で活躍する演奏家シリーズ~吉川幸祐ヴァイオリンリサイタル~」

セミナー形態:   コンサート
演奏:吉川 幸祐 (Vn)、占部 由美子 (Pf
ベートーヴェン : ヴァイオリンソナタ Op.12-2 イ長調
ラヴェル : ヴァイオリンソナタ ト長調
シューベルト : 幻想曲 ハ長調 D934
 

リゾナーレ室内楽セミナー2016 

雄大な八ヶ岳の麓、小淵沢のリゾナーレにおいて、
我が国室内楽界の第一線で活躍する経験豊かな演奏家達を講師陣に迎え、
若手弦楽四重奏団を対象とした室内楽合宿セミナーを行います。
セミナーでは公開レッスン(聴講自由)とリハーサルが集中的に行われ、
成果発表としての「リゾナーレ音楽の森ホール」における
フレッシュコンサートを以って終了します。
 
 
講 師
岡山 潔(Vn)東京藝術大学名誉教授
服部 芳子(Vn)愛知県立芸術大学名誉教授
ヤーン(Vn ,Va) カールスルーエ音大教授、バルトルディ・カルテット
川崎 和憲(Va)東京藝術大学教授、国立音楽大学客員教授
山崎伸子(Vc)桐朋学園大学特任教授、東京藝術大学名誉教授
河野文昭(Vc)東京藝術大学教授
 
会場
星野リゾート リゾナーレ  山梨県北杜市小淵沢町129-1 Tel:055136-5111
参加費用
受講料 無料、聴講自由(無料)
宿泊(リゾナーレ)と、交通費は参加者本人の負担
受講申込
受講申込書とグループの最近の演奏(スタンダードな弦楽四重奏曲の第1楽章を、MD/CDのいずれかに録音したもの)をTAMA音楽フォーラムへ送付すること。(既に同じメンバーでセミナーに参加しているグループは申込書のみでよい)
申し込み期間は2016年21日〜227日(締め切り日)まで
選考結果は3月初旬に書面にて通知します。
6組の受講カルテットを公募します。
受講曲目
参加グループの希望曲
最優秀賞、奨励賞
当セミナーにおいて、特に優秀な成績を修め、今後の発展が期待されるグループに「リゾナーレ室内楽セミナー最優秀賞」または「奨励賞」(総額100万円)を贈呈します。
 
 
 
 
 
 
音楽賞 
カルテット・アルパ
ヴァイオリン:小川響子、戸原直
ヴィオラ:古賀郁音
チェロ:伊東裕
 
 
奨励賞
カルテット・セレシア
ヴァイオリン:前田奈緒、福崎雄也
ヴィオラ:高橋梓
チェロ:福崎茉莉子
 
 
赤間・カルテット
ヴァイオリン:赤間さゆら、村山由佳
ヴィオラ:松岡百合音
チェロ:三谷野絵
 
 
カルテット・アマービレ
ヴァイオリン:篠原悠那、北田千尋
ヴィオラ:中恵菜
チェロ:笹沼樹
 

「 ウィーンのカフェにて 」

セミナー形態:   レクチャー & コンサート
講 師 :   田辺 秀樹 (お話とピアノ)
共 演 :   西野 薫 (ソプラノ)

  1. シュトルツ : ウィーンは夜こそ素晴らしい、プラーター公園の春
  2. ジツィンスキー : ウィーン、わが夢の町

W.R.ハイマン : 映画「会議は踊る」より 他
 

「 ライプツィヒ弦楽四重奏団 」

セミナー形態:  公開レッスン & コンサート
講師:    ライプツィヒ弦楽四重奏団
 

  1. ハイドン: 弦楽四重奏曲 作品64-5「ひばり」
  2. ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 ロ長調

受講曲: 次の弦楽四重奏曲の中からいずれか1曲を選択
 
 
ハイドンの弦楽四重奏曲
モーツァルトの弦楽四重奏曲
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲
シューベルトの弦楽四重奏曲
メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲
 
 
 
公開レッスン受講 応募締切: 4月16日(土)
 
 
受講生:
 
 
1ヴァイオリン 赤間 さゆら
2ヴァイオリン 村山 由佳
ヴィオラ     松岡 百合音
チェロ 三谷 野絵
 
 
受講曲:
メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調 op.12
 

「 セザール・フランクのヴァイオリンソナタ 」

セミナー形態:   レクチャー & コンサート
講 師 :   福中 冬子 (音楽学)
演 奏 :   近藤 薫 (ヴァイオリン) 長尾洋史(ピアノ)
 
フランク : ヴァイオリンソナタイ長調

「 ダリウス・ミヨーのピアノ、ヴァイオリン、クラリネットのための組曲 作品157b

セミナー形態:  公開レッスン & コンサート
講 師 :    野平 一郎(ピアノ)
共 演 :    松原 勝也(ヴァイオリン) 四戸 世紀(クラリネット)
ミヨー: ピアノ、ヴァイオリン、クラリネットのための組曲 作品157b
 
受講曲: D.ミヨー: ピアノ、ヴァイオリン、クラリネットのための組曲 作品157b
テープ審査時に全楽章の録音を提出のこと。
公開レッスン受講 応募締切: 6月25日(土)
 
 
・田邊 安希恵(Pf.)国立音楽大学大学院修士課程在学中
松本 理奈(Vn.) 国立音楽大学卒業
中島 健太(Cl.) 国立音楽大学卒業
 
 
・鈴木 菜穂(Pf.) 東京音楽大学大学院修士課程在学中
柏原 悠(Vn.) 東京音楽大学大学院科目等履修生
土岐 香奈恵(Cl.)東京音楽大学大学院科目等履修生
 
 
・坂牧 春佳(Pf.) 東京藝術大学3年在学中
湯原 佑衣(Vn.) 東京藝術大学3年在学中
亀居 優斗(Cl.) 東京藝術大学3年在学中
 

「 シューベルトとシューマンのピアノ作品 」

セミナー形態:  レクチャー & コンサート
講 師 :    ゴットリープ・ヴァリッシュ(ピアノ)
 
*出演者の都合により、当初予定しておりました「ショスタコーヴィチ 24のプレリュード 作品34」が
「シューベルト 3つのピアノのための小品 D946」に変更になりました。それに伴い、タイトルも変更いたしました。
 

  1. シューマン:子供の情景op.15
  2. シューベルト:3つのピアノのための小品 D946

 

「新進演奏家シリーズ デュオコンサート 」

 
演 奏 :ヨハネス・フライシュマン(ヴァイオリン)、ノーマン・シェトラー(ピアノ)
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタト長調op.96
ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ
シューベルト:二重奏曲イ長調
 

J.S.バッハのヴァイオリンとピアノのためのソナタ その3 」

 
講 師 :    小林道夫(ピアノ)
共 演 :    桐山建志(ヴァイオリン)
J.S.バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第4番BWV1017
J.S.バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第6番BWV1019
受講曲:
J.S.バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第4番BWV1017 または 第6番BWV1019
受講生:
 早淵綾香(ヴァイオリン) 東京藝術大学卒業、現在同大学院修士課程に在籍。
 香川 明美(ピアノ)     桐朋学園大学卒業、現在東京藝術大学大学院修士課程に在籍。
 
 
 
公開レッスン受講 
提出音源:第4番または第6番の第1楽章と第2楽章
応募締切: 10月1日(土)
 

「バルトーク 44の二重奏曲 」

講 師 :    今井信子(ヴィオラ)
共 演 :    佐々木亮(ヴィオラ)
バルトーク:44の二重奏曲 BB.104 より
受講曲:
バルトーク:44の二重奏曲 BB.104 より
第1、6、8、9、16、19、21、28、36、42、43、44曲の計12曲
公開レッスン受講 
提出音源:第19、21、28、36、42、44曲の計6曲
応募締切: 10月8日(土)
 
受講生:
 
①ヴィオラ2つのグループ:
山本 成(桐朋学園大学3年)、日下 水月(桐朋学園大学2年)
   
②ヴィオラ2つのグループ:
秀岡 悠汰(東京音楽大学卒業、同大学大学院在学中)、
芝田 春音(東京音楽大学卒業、同大学大学院在学中)
   
③ヴァイオリン2つのグループ:
葉石 真衣(東京藝術大学卒業、同大学大学院在学中)、
小山 あずさ(東京藝術大学卒業、現在仙台フィルハーモニー管弦楽団団員)
  
④ヴァイオリン2つのグループ:
長尾 春花(東京藝術大学大学院博士課程に在籍、ハンガリ―のフランツ・リスト音楽院に留学中)
花岡 沙季(東京藝術大学卒業、フランツ・リスト音楽院大学院修士課程修了)         
 
 
 
 

「高野耀子 ピアノリサイタル 」

演 奏:高野耀子(ピアノ)

 
J.S.バッハ:シンフォニア 第11番ト短調 BWV797 ハイドン:ソナタ第34番 変イ長調 Hob.XVI:46 シューベルト:アンプロムプチュ op.90 D.899 第3番変ト長調、第2番変ホ長調 ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ プーランク:主題と変奏
 

セミナーレポート

セザール・フランクのヴァイオリンソナタ

講師:福中冬子(音楽学)

日時:2016年6月19日(日)15時 スタジオ・コンチェルティーノ
演奏:近藤薫(Vn.)長尾洋史(Pf)

レクチャー・コンサート
     


 この日のセミナーは岡山潔TAMA音楽フォーラム理事長のあいさつで始まった。「福中先生は近所にお住まいで、実は何年も前の初日の出の時にお会いした。芸大では私が退官してから来られたのでそれはすれ違い。3年以上前(2012年9月)にTAMA音楽フォーラムで現代ドイツ作曲家ヴォルフガング・リームのピアノ3重奏の講義をしてもらった。専門は現代音楽なのだが、今日はフランクのヴァイオリンソナタを取り上げていただく。そのあとの演奏はともに現在活躍中の若手で、二人によるこの曲のCD録音を聞き、感心したので来てもらった」。
 福中先生のレクチャーは1時間にわたる熱のこもった内容だった。その概要は以下の通り。


*ここでリームのレクチャーをした後、岡山先生から誰のヴァイオリンソナタが好きかと聞かれたので、セザール・フランクと答えていた。現代音楽が専門だが、疲れたら、ショパンやブラームスをよく聞く。大学(国立音大)をでて、ニューヨーク大学人文大学院へ留学するとき、好きな曲として、フランクのヴァイオリンソナタのオイストラフ、リヒテルによるLPレコードをテープに入れて持って行った。まことに思い出の曲、多様な解釈が可能な名曲である。


*フランク(1822年~1890年)はベルギーのリエージュ生まれ。ショパンやシューマン、フランスに来たオッフェンバックと同世代で、サン・サーンスは10歳年下。当時のフランスはオペラやオペレッタが中心でその他の音楽は重視されなかった。この第二帝政時代が終わり、普仏戦争で敗戦して2か月後の1871年2月、国民音楽協会が設立された。フランクもサン・サーンスとともに創設にかかわった。これは「ガリアの芸術」を標榜し、フランスによるフランスの芸術をめざした。折から反ドイツ的ナショナリズムが盛り上がっていた。


*フランスの器楽音楽を考えるうえで、パリ音楽院の話が大切である。19世紀にパリ音楽院は今と違い、フランス人のためのエリート養成機関であり、外国人に開かれていなかった。だからベルギー人のフランクは父にフランス国籍を取ってもらって14歳でパリ音楽院に入学できた。のちにフランクがパリ音楽院のオルガン科教授になれたのもフランスに帰化来たおかげであった。


*ここで19世紀の欧州の状況を見直してみよう。いわゆる国民国家が成立した時代であり、ドイツは国家統一が成り、スラブなどでも民族独立の動きがあり、自分の国の文化、言語、伝統を重視し始めた。フランスではナポレオン3世の第2帝政時代(1852~1870年)、予算はもっぱらパリ・オペラ座に投入された。オペラは言語を使うから、言語統一のためにも、国の色が出やすいオペラ、オペレッタが大切にされた。


*オッフェンバックの「パリの生活」は第2帝政時代のパリの世相を見事に示している。1850年代に鉄道がフランス全土に敷かれ、人はパリをめざす。華やかなパーティに彩られた夜の生活。パリ・セーヌ郡の長、ジョルジュ・オスマン。近代都市パリを作った人物である、今もオスマン通りが残る。このパリを軽薄と見た人も多かった。イポリット・テーヌがその一人で、1860年代、アメリカ人を装って、パリを風刺した。テーヌはここでベートーヴェンの最後のピアノソナタを例に挙げて、ドイツ人の精神性を強調した。ドイツ圏ではベートーヴェンとロッシーニの対立が表面化していて、この構図がフランスとドイツの対立構図に移行したといえる。


*第二帝政後に成立したフランス国民音楽協会に反ドイツ的要素があったのは確かだが、フランスには器楽音楽に基準となる形式がなく、モデルとしてはやはり、モーツァルト、ベートーヴェンなどドイツ・オーストリアの音楽伝統であった。そしてこの上に近代フランス音楽が形成された。


*ここで重視されたのがソナタ形式であった。音楽形式にはロンドや変奏曲やいろいろあるが、ソナタ形式にはドイツ的な統一、統合の概念がある。二つの主題が別の調性であることなどの決まりもある。(ここで福中先生はピアノに向かい、実例としてモーツァルトのピアノソナタK545の第1楽章の2つの主題、また、ベートーヴェンの第5交響曲の第1楽章の2つの主題を弾いた)。


*さて、フランクのソナタは第1、第2楽章がソナタ形式で書かれている。(第1楽章の冒頭を弾いた後)この第2主題は第1主題とつながっている。また2拍目にアクセントをつけるのがフランクの特徴だ。この第3楽章冒頭、第1楽章の主題が変形して、リズムが揺れる音型でもこの特徴が出ている。このような「回想」は曲の随所に現れる。つまり循環構造という手法をフランクは使っている。


*フランクはドイツ的な技法に基づきながら、これをフランス風に表現したといえる。このヴァイオリンソナタと同じ1886年にブラームスが作曲したヴァイオリンソナタ第2番イ長調のはじめとを比べてみよう。フランクのほうは危うさの中の浮遊感といった趣ではじまる。3和音による9度の和音が基本となり、これに不協和音が入ってきて、不安を醸し出す。和音の使い方がブラームスとは大きく違うのだ。


*第1楽章の第1主題がひそやかで、第2主題が堂々と出ることや、展開部があまり展開せずに縮小して再現部に入るなどフランク独自のソナタ形式がここにある。このころ、ドビュッシーはすでに「春」を発表し、印象主義が彼に結び付けられ、フランクは旧式の作曲家だとも考えられていた。ただ、フランクはフランス的なものをドイツ的な形式に巧みに結び付けた。そこにフランクらしさがある。


 福中先生の講座はここで終わり、休憩のあと、ヴァイオリンソナタの演奏となった。二人の若手奏者はともに活気と情熱にみちた演奏を繰り広げた。アンコールとして、ヴァイオリンの近藤さんは「師匠岡山先生のリクエストで」といいながら、フォーレの4手連弾用の「ドリー」(作品56)の中の「子守歌」のヴァイオリンとピアノ編曲版を優雅に演奏してこの日のセミナーは終わった。(記録:西谷晋)





シューベルトとシューマンのピアノ作品

講師:ゴットリープ・ヴァリッシュ(Pf)

日時:2016年8月14日(日)15時 スタジオ・コンチェルティーノ


レクチャー・コンサート


       【演奏プログラム】
    ロベルト・シューマン:子供の情景
         第1曲 見知らぬ国と人々について
         第2曲 不思議なお話
         第3曲 鬼ごっこ
         第4曲 おねだり
         第5曲 十分に幸せ
         第6曲 重大な出来事
         第7曲 トロイメライ
         第8曲 暖炉のそばで
         第9曲 木馬の騎士
         第10曲 むきになって
         第11曲 怖がらせ
         第12曲 眠りに入る子供
         第13曲 詩人は語る


    フランツ・シューベルト:3つのピアノ曲 D,946
1. 変ホ短調 2.変ホ長調 3.ハ長調


 G・ヴァリッシュによるレクチャー・コンサートは、昨年10月12日以来の第2回目で、その時はモーツァルトのK.330ソナタ、ベートーヴェンの6つのバガテルOP.126,シューベルト4つの即興曲OP.935というプログラムであった。今日は初めにシューマン、それからシューベルトを取り上げ、実に綿密な解説を加えながらピアノを弾き、休憩後にプログラム通りの素晴らしく心のこもった演奏をした。初めに岡山潔TAMA音楽フォーラム代表が「今日はお盆休みとあって、聴講者が少ないけれど、今日ここに来た人は幸運ですよ」という通り高度に充実した展開となった。当初、シューベルトの代わりに、ショスタコーヴィッチの「24の前奏曲」OP.34が予定されていたが、講師の要望で、シューベルトに変更された。レクチャーのドイツ語通訳はヴァイオリニストで、ミュンヘン室内合奏団員の吉川幸祐さんが務めた。
 レクチャーは実にち密、細部にわたったが、そのごく一部をここに記録しておく。
(シューマン:子供の情景)
*この有名な曲について話すのは簡単ではない。彼の作品番号23まではすべてピアノ・ソロのために書かれた。つまり、1830~40年の間はピアノの年であり、この曲は1838年3月にできた。このときコンサートのためウイーンに滞在していた9歳年下の天才少女で後に結婚するクララ・ヴィークにあてた手紙で、30もの小さな作品から12曲を選んで「子供の情景」と名付けたと報告している(後で1曲加えて13曲になった)。
*抒情的で親密なこの曲には当時誤解も生じた。子供のための曲と見られ、難しすぎる、子供には3つの手が必要だとの評もあった。実はそうではなくて、大人が振り返った子供のころの情景といえよう。シューマンもそのように述べている。
*彼が一番影響を受けたのはバッハとジャン・パウルであった。この曲のなかでBACH
の音型が使われているし、第13曲では、バッハへのオマージュとして、4声のためのコラールが聞こえる。
*彼は作曲を終えてから曲のタイトルを考えた。ドビュッシーもそうだった。いまこのスタジオにかかっている絵はどうだろう、といったところで、岡山潔代表が次のように補足説明をした。「この絵画は私の友人が描いた「天上の楽師たち」シリーズの一枚で、彼も描き終わってから題名を考えた。初めにタイトルがあると表現内容が規定されてしまうのを恐れた点では、シューマンと同じであったろう」。
*この曲の素晴らしさは、詩的ファンタジーばかりではなく、作曲技法と構成からもそういえる。第7曲のトロイメライが頂点をなす山波を描いている。最初の6曲はすべてシャープのつく調性で、6度の上下移動を多用している。それからヘ長調のトロイメライが来る。すごい変化である。
*ここで彼のメトロノーム指示について述べておきたい。トロイメライの指定は4分音符=100だから、かなり速く、140秒ぐらいで終わる、と弾いて見せた。ホロビッツやハスキルなどの大家ははるかに遅く、倍近い遅さの演奏もある。1868年にクララがシューマン全集を出したが、ここでは、トロイメライのテンポは80に、つまり20%遅くした。私もシューマンの指定に従うわけではないが、とても参考になる。トロイメライを速めに弾くと子供らしさが出る。第1曲の指定もとても速い。それにより、自発的で軽やかな雰囲気が出る。
*第1曲と第13曲のタイトルは理解しにくい。第1曲の「見知らぬ国と人々について」は彼がウイーンにいるクララに思いをはせたのかもしれない。13曲の「詩人は語る」の詩人とは誰だろう。シューマンその人、自分の肖像と考えてよい。彼はすごく内気で、人に尋ねられてやっと答えるという風だったので、この第13曲でも曲想が途切れ途切れに進み、最後は一つ一つの和音を鳴らして消えていく。


(シューベルト:3つのピアノ曲D946)
*私にとって非常に特別な曲で、長らく弾いてきた。これは1828年、つまり最後の年の5月に作曲された。シューベルトは182628年の3年間に2つのピアノトリオ、弦楽4重奏曲や弦楽5重奏曲、「冬の旅」などの歌曲、即興曲D935などのピアノ曲と実に多くの優れた、しかも理解しやすい傑作を生みだした。しかしこのD.9463曲は理解が難しい。やさしく歌う曲想ではなく、緊張感と葛藤があり、滑らかに進行しない。
*第1曲変ホ長調は疾風、嵐のように劇的で、バスラインを聞くといい。テーマは歌わず、紙を小さく切ってばらまいたような趣である。旋回しても上に行かず、閉じ込められた印象を与える。付点音符の進行が音楽を不穏なものにしている。3曲ともそうなのだが、下降への傾きがある。音型が下りていくことで沈痛な雰囲気が生まれる。「白鳥の歌」のなかの「アトラス」の曲想に似て、深刻な、運命的な痛みを感じさせる。この曲には一つの中間部があるが、もともとはもう一つの中間部があった。シューベルトは繰り返しが多いのを避けるためか、後でそれを省いた。だが、1868年にこの曲が出版されたとき、ブラームスは二つ目の中間部を復活して出版させた。以前私は中間部を二つとも弾いていたが、昨年から一つにした。今日はどちらにしようかな。(あとのコンサートではやはり中間部は一つだけで演奏された)
*第2曲変ホ長調。幻想曲D.934の冒頭のように震えるようにトレモロで始まる。ここでも第1曲同様、音の幅が狭い。つまり歌謡的でなく、深刻な感じがする。
*第3曲はハ長調となる。4分の2拍子のスケルツオ、ABAの三部形式。2度でだんだんと下降していく音型。この後はボヘミアンな奔放さを見せる。とても新鮮な感じがする。中間部は変ホ長調に転調して、緩やかに静かに進む。ふつうスケルツオの中間部は短くて軽いのだが、この中間部は82小節もある。最後のAの部分にコーダがついているのも珍しい。曲はいったん上昇するがやはり下方に向かって終わる。


(ゴットリープ・ヴァリッシュ氏の略歴)
1978
年、ウイーンの音楽一家に生まれる。6歳からウイーン国立音楽大学に学び、H・メジモレックに師事。米国でのストラヴィンスキー。アウオードで第1位になるなどのコンクール歴を重ねる。欧州の主要オーケストラと、著名指揮者と共演を重ねてきた。その後活動範囲は世界に広がる。
 2006年のモーツアルト記念年、09年のハイドン記念年には、ウイーン楽友協会でシリーズコンサートを開催。また、アルメニアのエレバンで毎年開催のオーストリア・アルメニア音楽祭の創立者であり共同監督も務める。2010年からジュネーヴ高等音楽院の教授。
2017
年からベルリン芸術大学教授に就任の予定。
(記録:西谷晋)




 

バルトーク 44の二重奏曲

講師:今井信子(ヴィオラ)
日時:2016年11月6日(日)15時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

          
 
 この日は世界的なヴィオラ奏者、今井信子さんのTAMA音楽フォーラム2回目の登場である。最初に岡山潔代表が「この44のデュオは本来ヴァイオリン用の曲だが、ヴィオラ2本でも、チェロ2本でも演奏できる。この曲集は取り組めば取り組むほど難しく、しかし興味深い」と語りながら、今井信子さんを紹介した。
 今井さんはまず「今日、ヴァイオリン2本のほかヴィオラ2本の編成でもレッスンし、演奏もする。私(今井)と佐々木亮さんのコンサート演奏では原調で弾くとの断りがあった。さらに今井さんは「昨年からスペイン・マドリードのソフィア音楽院という素晴らしい学校で最後の大きな仕事という気持ちで教えている。いい教材を探しているうちに出会ったのがこの曲集で、ブダペストに出かけ、そこの民族音楽の大家に二日間にわたりこの44曲を教えてもらった。バルトークはハンガリーのほか、ルーマニア、セルビア、ブルガリアなどの農民から集めた膨大な数の民謡から44曲のための素材を選び(ただ、第35,36曲だけは自作の旋律)、1931年に作曲した。私は昔、斎藤秀雄先生からハンガリー音楽の特徴を叩き込まれていたが、本場の人はそれを身体で感じていることが分かった」とヴィオラを弾きながら説明した後、レッスンが始まった。
 受講生は4組で、①ヴィオラ2本=山本成(桐朋学園大学3年)と日下水月(同大学2年)②ヴィオラ2本=秀岡悠太(東京音大大学院)と柴田春音(同大学院)③ヴァイオリン2本=葉石真衣(東京芸大大学院)と小山あずさ(東京芸大卒、仙台フィル団員)④ヴァイオリン2本=長尾春花(東京芸大博士課程、フランツ・リスト音楽院留学中)と花岡沙季(東京芸大卒、フランツ・リスト音楽院修士卒)の8人。この4組の若手演奏家が44曲のうち、バルトークの示唆に従って今井さんが選んだ12曲をかわるがわる演奏して、今井さんの実に綿密な指導を受けた。また、それぞれの曲の中で、1910年代のバルトークが収集した当時の農民の歌の古い蝋管による録音が参考として流された。以下は、12曲の曲順とその指導内容をごくかいつまんで記す。
 44曲=トランシルヴァニアの踊り=ヴァイオリン2本の③組の演奏。きれいに弾けたが、メロディーはもう少しよたった感じがほしい。やりすぎはいけないけれども。水彩ではなくもっと油絵的に情熱的をこめて。リズムがすごく大切、2つの声部がしっかりと聞こえるように。農民の音楽はシンプルに見えるがそうではなく、生活からにじみ出す味わいがある。曲の後半はどんどん泥臭くなる。特に最後は、力強く最後の音の一つ前の前打音である16分音符を勢いよく弾き切って、しっかりと終結音を決めたい。
 19曲=メルヒェン=ヴィオラ2本の②組の演奏。おとぎ話の感じを出したい。ブルガリアの3拍子、3拍子、2拍子のリズムだが、もっとなだらかに、平坦に進めるように。おなじテンポでも速い遅いの感じを表現できるが、ここは、遅く感じるように演奏したい。(第2ヴィオラに)これを伴奏だと思わないこと。伴奏ではなく、対旋律として音楽に寄り添うこと。
 16曲=ブルレスク=ヴァイオリン2本の④組の演奏。これは実は失恋の歌なのだと古い録音を聞かせる。歌うところとスタッカートのところを弾き分けたい。もっとリズムの強調がほしい、そして演奏に自在さがあっていい。
 28曲=悲しみ=ヴィオラ2本の①組の演奏。初めの7小節は前奏のつもりで、ヴィブラートをほとんどかけずに静かに。そのあと「話」が始まる。まことにハンガリー的、バルトーク的に。主旋律では特定の音を強調しすぎないように。第二ヴィオラはひとりで行かず、第一奏者を支えるつもりで。バルトークの肉声を聴くと、ピアノとかバルトークとかの発音は頭にアクセントがある。音楽でも同様である。
 43曲=ピチカート=ヴァイオリン2本の③組の演奏。アレグロではなく、アレグレットのテンポで弾きたい。もっと強調してほしいところがある。二つの楽器の対話の表情の違いに注意すること。
 36曲=バグパイプ=ヴィオラ2本の①組の演奏。最後が貧弱だ。しっかりと決めること。上品すぎる。まじめすぎないで、もっと土臭く前へ前へと強引に進む感じ。曲の終止はピタッと止める。このあとヴァイオリン2本の④組が繰り返しなしで同じ36曲を弾く。今井さんの指示があったせいで、力強く演奏した。
 21曲=新年の歌(1)=ヴィオラ2本の②組の演奏。この曲は3段階からなっている。始まりは開放弦で、単にきれいな音ではなく、多少かすれ気味のような音で情感を出して。テンポはもう少し早めに。音楽演奏にはパッシブ(受動)とアクティブ(能動)の要素が代わる代わる出てくるものだが、ここはパッシブに演奏したい。第一ヴィオラのボウイングへの注意もあった。
 42曲=アラビアの歌=ヴァイオリン2本の③組の演奏。この曲はフルートとドラムを模したところがある、としながら、古い歌による録音をかけて聞かせる。中間部はスタカート気味に弾く方がいい。クレッシェンドは少し早めにかけるように。
 1曲=からかい歌=ヴィオラ2本の①組の演奏。これは実はからかい歌ではなく、マッチ・メーキング(結婚仲介の意味か)の曲である。あまりヴィブラートをかけずに、シンプルに演奏すること。
 8曲=スロヴァキアの歌(2)=ヴァイオリン2本の②組の演奏。よかったけれども、もう少し自分の歌になるように工夫を。半音のところに節をつけるとか、スラーをかけるとか表現を考えてほしい。
 6曲=ハンガリーの歌=ヴィオラ2本の②組の演奏。初めのところの3つの音に変化をつける。平板にならないように。最後の音はヴィブラートは要らない。
 9曲=遊びの歌=ヴァイオリン2本の③組の演奏。最初から8分音符を少し長めに弾き、進んでいくこと。
 以上でレッスンが終わり、休憩後、今井信子・佐々木亮の二つのヴィオラによるコンサートになった。プログラムはレッスンと同じ12曲が同じ曲順で演奏された。佐々木亮氏は日本を代表するヴィオラ奏者で、現在、NHK交響楽団の首席ヴィオラ奏者として、また室内楽奏者として多彩な活動を展開している。二人の演奏はまことに力強く、且つ繊細で、バルトークの弦による「ミクロコスモス」を見事に描き出し、素晴らしい世界が広がった。そして最後に本日の受講者全員が加わり、第44曲トランシルヴァニアの踊りがレッスンの成果を示しながら、きわめてスケール大きく、情熱的に演奏された。(記録:西谷晋)
 
 
 
 

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